これはみすてむず いず みすきーしすてむず(2) Advent Calendar 2025の9日目の記事です。みすてむずは主にITエンジニアが集うMisskeyインスタンスです。

はじめに

近年ノートアプリ界隈は激動の時代を迎えています。Evernoteは尋常ではない値上げを繰り返し、Notionはシェアを広げ、MCP対応でObsidianが台頭し、その裏ではOffice365経由でひっそりとOneNoteが浸透し、もちろんGoogle Documentもあり、そしてなかなかiOSのメモ帳も馬鹿にできず、といった具合です。今なおEvernoteをPersonalプランで利用し続けている立場から、その軌跡について改めて振り返ってみたいと思います。あの頃に戻りたい。

2023年以前の料金体系

あんまり覚えてませんが支払い履歴を見るとこんな感じだったようです。

名称 Free Plus Premium
制限 ノートの上限数10万
ノートブックの上限数250冊 ノートの上限数10万
ノートブックの上限数1,000冊
同期デバイス数無制限 特になし
年額 無料 5,200円 忘れた

「100年続く企業」を掲げていたEvernote社がイタリアのBending Spoons社に買収されたのが2022年です。この頃のEvernoteの品質は本当にひどく、起動は遅く、使い勝手は悪化し、特に同期周りが完全に壊れていました。Windowsでプレーンテキストを書いているだけなのに編集競合が連発してノートが3つに分裂するようなことが当たり前に起きており、フットワークの軽いユーザーはこの頃はもうとっくに見切りを付けて離脱していたような印象があります。 しかし、それでもPDFや写真をぽいぽい放り込み、OCRが効いてテキストで検索ができる、ノートは無限に履歴が残る、というコンセプトに完全に追従できているメモアプリは私の知る限りまだ存在しませんでした。肝心の日本語検索精度も落ちていましたが。

値上げ(2023年)

プランが再編成されて大幅値上げされました。

名称 Free Personal Professional
制限 ノートの上限数10万→50に縮小
ノートブックの上限数1冊
同期デバイス数1台 同期デバイス数無制限 特になし
年額 無料 9,300円 12,400円

無料プランでは1アカウントで持てるノートの上限数が50(50万ではなく50です)に激減し、事実上Evernoteをまともに利用するなら有料プランが必須になりました。有料プランの最低金額はPlusプランの5,200円/年から2倍近い値上げとなります。ユーザーの大量離脱が起きたのもこの値上げがトリガーですね。実際にどれだけのユーザーが離脱したのかは知る由もありませんが、EvernoteからNotionやObsidianへ移行したという記事がはてブに上がってくることも増えました。 ただし値上げの分だけきちんとテコ入れはなされ、(当たり前の話ではありますが)編集競合は起きなくなり、またデバイス間での同期も高速になりました。頻繁に「今月のEvernoteはここを改善した」とアナウンスが行われるようになったのもこの頃からです。正直なところあまり魅力的な機能はなく、ユーザー目線では壊れていたものを元に戻すために値上げしたように見えていたことは事実です。 次にEvernoteが打ちだした柱は、AIを使った編集、タスク管理・スケジューラー、そして同期のさらなる高速化です。要するに開発陣はユーザーの生活の中心にEvernoteがあるといったイメージを夢想していたものと思われます。しかし大半のユーザーはスケジュール管理をGoogleまたはAppleのサービスで行っているわけで、勝ち目のある戦いだったのかどうかは分かりません。企業ユースに商機を見出していたのかもしれません。 またAIが使えるのは有料プランだけなのですが、生成AIを使った機能の日本語対応は驚くほど遅く、処理自体も遅く、しかも今に至ってもエディタと統合されていません。たとえば「誤字を修正」機能というものがあるのですが、単に別タブに誤字修正後のノート全体が出力されるだけで、何がどう変わったのかはまったく分かりません。テーブルは「(表)」や「~~という表あり」という文字に置換されて中身は消えてなくなります。また画像はただ単純に削除されます。もちろん誤字をハイライトしたりdiffを見せてくれたりする機能はありません。なお現在のこのノートに適用すると処理が終わるまで40秒から1分かかります(ここ数日毎日計測していたので間違いないです)。

値上げ(2025年)

またしてもプランが再編成されて大幅値上げされました。

名称 Free Starter Advanced
制限 ノート件数50件
ノートブック1冊
同期デバイス数1台 ノート件数1,000件
ノートブック20冊
同期デバイス数3台 制限なし
年額 無料 7,104円 17,904円

Evernoteを長期間使っていてノート件数が1,000件と言うことはあり得ません。つまりノートを大幅に整理して最大3デバイスの制約を受け入れてStarterに切り替えるか(そこまでしてEvernoteにしがみつく意味はありませんが)、またしても2倍近い値上げを受け入れてAdvancedに切り替えるかのいずれかを選ぶことになります。すごいですね。繰り返しますが2023年までPlusプランは5,200円/年だったんですよ。

今のEvernoteに何が残ってるのか

身も蓋もないですが、思い出とデータです。強いて言うなら強力なWebクリップツール。あとAI検索……が実装される予定があります。いつになるのか知りませんが。

要するにデータを人質に取られているという話なのですが、昔は自分のTwitterのlikeを毎日Evernoteに記録してくれるようなサービスがありまして、2014年頃のデータを見ると懐かしすぎて涙が出てきます。あの頃のEvernoteは返ってこないんだ……Twitterもだけど……

画像検索のOCRは今なおやはり優秀で、縦書きの日本語でも検索で引っかけることができます。代替手段はいくらでもあるとはいえ、普段使うエディタにこの検索が統合されているというのはやはり強い。

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